英語化が拍車をかける日本の衰退  From 施 光恒(せ・てるひさ)

                皇室とともに

三橋貴明の「新」経世済民新聞』  2021年2月5日  英語化が拍車をかける日本の衰退  From 施 光恒(せ・てるひさ)     @九州大学 ■□━━━━━━━━━━━━━━━━□■

こんにちは~(^_^)/(遅くなりますた…)
先日、産経新聞の地方版(九州・山口版)のコラムに、久しぶりに英語化問題について書きました。 【国家を哲学する 施 光恒の一筆両断】「英語化は本当に経済を活性化させるのか」(『産経新聞』(九州・山口版)2021年2月1日付) https://www.sankei.com/region/news/210201/rgn2102010004-n1.html 昨年4月から小学校での英語正式教科化が始まりましたが、これが推進された主な要因は、経済界からの強い働きかけでした。 経済界はしばしば次のように主張していました。 「日本経済の昨今の停滞はグローバル化の波に乗り遅れたせいだ。英語が堪能な『グローバル人材』を増やさなければならない。英語化が進めば、経済が活性化する。また、国籍にとらわれず英語で多様な人材が交流できれば、日本の企業や社会の創造性も増すはずだ」。 上記の産経のコラムのなかで、私は経済界のこの主張は大いに疑わしいと論じました。 その際、ドイツの経済学者C・ビンツェル教授らの最近の論文「俗語化と民主化」というものに触れました。(この論文の存在、京大の柴山桂太さんに教えてもらいました<(_ _)>)。 (Binzel, C., Link, A and Ramachandran, R., “Vernacularization and Linguistic Democratization,” CEPR Discussion Paper 15454, 2020) この論文、非常に面白いものでした。ビンツェル教授らは、中東地域を主な研究対象とする経済学者です。アラブ諸国の経済発展がなぜ進まないのかという問題意識から、アラブ社会の言語状況に興味を抱きました。アラブ社会では、書き言葉と話し言葉が現在でも異なっています。主にエリート層が用いる書き言葉と、庶民が日常生活で用いている各地の話し言葉が大きく違っているのです。 これはちょうど、中世ヨーロッパでは、エリートの言語と、庶民が日常で使う言語が異なっていた状況と似ています。中世ヨーロッパのエリートはラテン語で交流したり、知的活動に従事したりする一方、庶民はラテン語を理解できず、各地の俗語(現在の英語やドイツ語のもとになった言語)のみを使い暮らしていました。

 アラブ社会の言語状況が中世のヨーロッパの言語状況に似ているということから、ビンツェル教授らは、ヨーロッパの近代化の過程に関心を持ちます。ヨーロッパ諸国は近代化に伴って、経済が成長し、社会の活力や創造性も増したが、その際、言語を取り巻く状況がどのように変わったのか、調べたのです。 中世ヨーロッパでエリートの言語がラテン語だったのは、ローマ・カトリック教会の影響力が大きかったからです。ローマ・カトリック教会ラテン語公用語に定め、礼拝などの儀式はラテン語で行い、聖書をラテン語から各地の俗語に翻訳することも禁じていたからです。 この状況を変えたのは、周知のとおり16世紀前半の宗教改革です。 聖書が各地の俗語に翻訳され、庶民が日常言語で聖書を読めるようになりました。また、翻訳で知的な語彙が増えたことなどにより、各地の俗語は次第に鍛えられていきます。各地の俗語は、知的で抽象的な事柄も論じられる洗練された言語へと発展したのです。 その結果、宗教改革以降、特にプロテスタンティズムを採用した国では、俗語で書かれる出版物が急激に増えました。この流れのなかで、一般庶民が知的事柄に接する機会が著しく増大します。ラテン語を知らない庶民でも、日常の言葉で様々な本を読み、学び、考えることができるようになりました。多数の普通の人々が知的能力を磨き、発揮することが容易になったのです。

 このあたりの話、私も以前、拙著『英語化は愚民化』(集英社新書、2015年)でわりと詳しく論じました。宗教改革以降、各地の俗語が発展し、知的な言語となり、俗語で出版物が増え、高等教育も受けられるように徐々になっていった。そのため、多数の庶民が知的能力を鍛え、開花させる可能性が以前よりも非常に大きくなった。実際、多くの庶民が能力を鍛え、発揮し、社会の様々な分野に参加できるようになった。そのおかげで、ヨーロッパ諸国の活力が大いに増し、近代化につながったのだ。そういうことを強調しました。 (下記の本メルマガ記事などでも、以前、触れました。) 施「グローバル化は中世化」(メルマガ『「新」経世済民新聞』2016年3月18日付け) https://38news.jp/politics/07102 ビンツェル教授らは、私とほぼ同じ観点に立ちつつ、こうした推論を、「俗語での出版物の増加数」、「俗語での出版物が増えたことにより、本を書く人々の出身階層がどのように変わったか」などの歴史的資料に当たりつつ、補強していきます。 ビンツェル教授らは、資料に基づき、俗語での出版物が大きく増加した地域では、急速な経済成長がみられたと推測しています。また、歴史に名を残す著名な人々が数多く生まれたことを明らかにし、社会の創造性が高まったとも言えるだろうとも述べています。

 そして教授らも、エリートの言葉と庶民の言葉が一致し、多数の普通の人々が日常の言葉で知的事柄を論じ、社会の様々な場面で活躍できる環境が整えられたことが、活力ある近代社会がヨーロッパで成立した要因だと示唆しています。別の言い方をすれば、これこそが、大きな経済成長を生み出し、創造的活動を活発化させる要因だろうと考察しています。 ビンツェル教授や私のこうした推論が正しければ、やはり昨今の日本社会の英語化は、経済成長を促すどころか、その妨げになる恐れがありますよね。 明治以来、日本が近代化に成功し、曲がりなりにも経済大国になったのは、日常の言葉である日本語で知的事柄を学び、考え抜くことができる環境が整備されてきたからでしょう。 先人が外国語の文献を数多く翻訳し、日本語を鍛え、日本語で森羅万象を論じ考えられる環境を作ったおかげで、多数の普通の日本人が能力を磨き発揮しやすい環境が整えられたことが、日本社会の活力を養ったのだと思います。 英語化が今後も進めば、学問やビジネスの第一線では英語を使うものとされ、日本語は日常生活のみで使われる卑俗な言葉に堕ちてしまうかもしれません。「エリート層は英語、庶民層は日本語」というふうに分かれてしまうという事態です。そうした事態に陥ってしまえば、日本経済は成長するどころか著しく衰退してしまうでしょう。 
 

(小学校での英語正式教科化が、エリート層と庶民層の分断を進めるきっかけとなるのではないかという懸念について、下記をご覧下さい)。 施「英語化と「国のかたち」」(『「新」経世済民新聞』2015年7月10日) https://38news.jp/archives/05867 実際、「社内公用語」の英語化をいち早く進めた楽天も、あまりうまく行っていないようです。 (「楽天、トラブル続出の原因は「英語公用語化」? 時間が2倍かかり効率低下、意思伝達ミス」(『ビジネス・ジャーナル』2021年1月10日配信) https://biz-journal.jp/2021/01/post_199929.html 創造性の開花という点でも、日常の言語である日本語で、多種多様な分野の先端の事柄を知り、考え、論じられる環境が整えられていることが大切です。多数の普通の人々が、様々なことを知り、考え、論じることができる環境があることが、社会の創造性を増し、活力を生み出すのです。 その貴重な環境を壊してしまう恐れのある英語化路線やその背景にある現在のグローバル化路線を、やはり大いに疑ってかかる必要がありそうです。

 

 

今枝

国語の強化は、全教科の底上げになります。外国語教育の目的は、外国語の専門家を育成することです。母国語で思考するから思考力が向上する。社会の形成者を育成することが教育の目的ですから英語を学ぶ時間を費やす必要がないものは学ばなくていい。その分、社会の形成者となる学びをする。新人たちの努力で高等教育まで母国語で学べることを感謝すべきです。日本に誇りを持つ心が足りないことは問題です。

#英語

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