テロに屈しない日本国を築こう 桜井よしこ氏

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【第177回】 テロに屈しない日本国を築こう

櫻井 よしこ / 2013.01.28 (月)

 国基研理事長 櫻井よしこ  
              
 1月16日に発生したアルジェリア人質事件の本質は、2001年に米国を襲ったアルカイダなどのテロ勢力が、10年余の間にアフリカに新たな拠点を築いて勢力を盛り返しているということだ。
 ●アフリカが過激派の拠点に
 「アラブの春」で民主化運動が広がり、北アフリカ独裁政権が倒れたが、民主的体制は樹立されていない。イスラム過激派やテロ勢力が混乱に乗じて介入し、民主化運動に負の影響を及ぼしている。リビアに典型的に見られたように、独裁者に傭(やと)われた勢力は大量の武器を手にし、アフリカでイスラム過激派と組み、テロと暴力の新拠点を築きつつある。シリアの内戦も続いており、核や生物・化学兵器が過激派勢力の手に渡る危険性は大きい。
 1月11日、仏軍がマリへの軍事介入に踏み切ったのは、アルカイダをはじめとするテロ勢力がサハラ砂漠を中心にアフリカの北部、西部、中部、北東部にまたがる広大な地域に根を下ろし、アフリカがアフガニスタン化しつつあることを警戒したからだ。国際社会のテロとの戦いは続いているのであり、今回の人質事件はアフリカがテロとの戦いの前線になったことを示す明確な事例である。
 この間、日本は2010年1月、民主党政権下でインド洋における各国艦船への給油活動から手を引いた。ソマリア沖の海賊対策には、中国にも遅れをとって参加した。一国平和主義的な現実遊離の国家には、世界各地で働く邦人保護は不可能だろう。そして今回、10名の同胞の尊い命が奪われた。
 ●日本版NSC設置など急務
 東南アジア歴訪中の安倍晋三首相は出来る限りの対策をとったと思う。テロ発生にも拘わらず、予定通り最後の訪問国インドネシアを訪れ、安倍外交の重要点を発表したうえで帰国したのは、テロに動じない姿勢を見せた点で評価したい。
 だが、日本国のテロ対策には他国のそれに較(くら)べて根本的な欠陥がある。安倍首相はアルジェリアのセラル首相に軍事作戦中止を要請したが、極めて無念にも各国の犠牲者中、最も多かったのが日本人だった。テロとの戦いでは「人命優先」も「慎重な行動」も通用しないのである。非情に見えてもテロ勢力には断固たる対処を最優先しなければならない。だからこそ、情報が極端に不足していた当初は英国のキャメロン首相も人命優先と語ったが、すぐにアルジェリア政府軍の行動を是認した。
 日本もまた、このような悲劇を生まないためにも、テロに妥協しない国として、確固たる力を築かなければならない。首相官邸の司令塔機能を強化する国家安全保障会議(日本版NSC)の設置や、情報後進国といわれる現状を脱却するために情報収集及び分析の中核となる情報省の立ち上げを急ぐべきだ。各国に派遣される駐在武官も大幅増員し、自衛隊員の大幅増を可能にする防衛予算の拡充こそ忘れてはならない。(了)