脱原発を拒絶した国民の選択 桜井よしこ氏

 
【第171回】 平成24年12月17日
脱原発を拒絶した国民の選択
国基研理事長 櫻井よしこ
原発ゼロ」と大書したビールケースに立って選挙を戦った菅直人前首相(民主)の
敗北は、国民が日本国の進路としてどちらを向いているかを明確に示したものだ。比
例区で復活当選を果たしたとはいえ、前首相たるベテランが選挙区で拒絶されたのだ。
それは脱原発、対中妥協、反憲法改正路線への峻拒である。
 
●立地選挙区で自民圧勝
例えば原発が立地する13 選挙区の内、11 選挙区で自民党が勝利を収めた。女川原発
のある宮城5 区で民主党安住淳氏が、川内原発のある鹿児島3 区で国民新党の野間
健氏が議席を獲得したが、脱原発民主党は230 から57 へと結党以来の大幅な議席
となった。「卒原発」の日本未来の党は62 から8 へと、これまた激減し、「即時原発
ゼロ」の共産党も「即時原発稼働ゼロ」の社民党も少ない議席をさらに減らして潰滅状
態である。
日本未来の党嘉田由紀子代表は「党の主張を浸透させることができなかった」ゆえ
の敗北と述べたが、主張の浸透がむしろ更なる議席減につながった可能性もある。
原発を国家のエネルギー政策の柱の一つに位置づけ、3 年かけて最善のエネルギーミ
ックスを慎重に決定するとした自民党の歴史的大勝利は、多くの新聞やテレビがあお
った反原発路線と国民意識の間に大きな乖離があることを証明した。
原発なしでは日本の産業は立ち行かず、国際競争に立ち遅れ、経済の振興もあり得
ず、社会福祉や医療、介護、教育支援などの充実も不可能であることを、国民は認識
していたといえる。国家経営の視点を国民は備えていたのであり、その視点を欠いた
一連の報道は完全に間違っていたのである。
●国防強化支持も鮮明に
安全保障についても同様である。自民党憲法改正案の中の「国防軍」という言葉を
あげつらって批判が展開された。
尖閣諸島国有化後も、「冷静に対処する」という言葉の陰に隠れて事実上、国土防衛
の策を講じようとしない民主党とは対照的に、尖閣諸島への公務員常駐を提唱した安
倍晋三自民党総裁に対する批判もあった。だが、自民圧勝は、日本周辺に充満する中
国の脅威に目を閉ざし、尖閣諸島を無防備な現状のままに保つのがよいとすることの
欺瞞性を国民が見抜いていたからではないか。
国民は、国の安全も国民の命の守りも全て他国に任せる憲法前文の無責任姿勢より
も、自ら努力して守る路線を支持したといえる。憲法改正試案も出せなかった民主党
護憲を唱える日本未来の党社民党共産党が敗北し、改正試案を国民の前に明らか
にして、日本国の在り方を正面から問うている自民党日本維新の会などが勝利した
ゆえんである。日本国民の考える力を信頼して、国家の基本政策を問い続けることの
意義を改めて確信した。 (了)
 
国基研