2049 年までに世界の海洋支配が中国の夢 平松茂雄氏

【第161回】 平成24年10月9日
2049 年までに世界の海洋支配が中国の夢
国基研評議員 平松茂雄
中国海軍初の空母「遼寧」号が就航する一方、中国海軍の艦隊がわが国の沖縄本島宮古
島の間の海域を通過して、西太平洋に出て演習を実施したと報じられた。
 
●次の目標は本格空母の建造
空母「遼寧」はソ連の崩壊で建造が中断していたのを、中国がウクライナから購入して完
成させた。当初「ワリヤーグ」という名前をそのまま使っていたが、最近母港の所属する省
名に変更したばかりである。
この空母はスキーのジャンプ台のように先端が少し上向きになっていて、艦載機はそれを
利用して発進する。米国の空母ではカタパルトといって、簡単にいえば大砲の砲弾を発射す
るようにして発進する。スキージャンプ式では、航空機の大きさ、重量、性能、したがって
搭載する爆弾・ミサイルの質と数、発進する時のスピードなどに、格段の差がある。また着
艦する時には、アレスティングワイヤーと呼ばれる特殊なワイヤーに引っ掛けて、後ろに引
っ張ってもらって止まる。
筆者は一度だけ米空母に乗った経験があるが、ひっきりなしに発進と着艦を繰り返してい
て、空母全体が24 時間戦場であると実感した。それ故、米空母の相手になる国は当分ない
といってよい。中国に限らず、いきなり米国並みの空母を建造するのは不可能であるし、保
有しても運用することは難しい。中国は当面、実現可能なスキージャンプ式の空母を運用し
て、次にカタパルト式の本格的な空母の建造、運用を目指しているとみられる。
 
●遠からず西太平洋に進出
ここ10 年来、ソ連製ソブレメンヌイ級駆逐艦(6500 トン)を核にした中国海軍の艦隊が、
沖縄本島宮古島海域を通過して、西太平洋海域で頻繁に艦隊訓練、演習を繰り返している。
遠からずソブレメンヌイ級駆逐艦に代わって空母を核とする艦隊が出現することになろう。
大雑把に見て、「遼寧」を運用するのに数年かかるだろうから、中国が本格的な空母の時
代に入るのは、2020 年代から2050 年の間であろう。
気の長い話かもしれないが、2021 年は中国共産党が誕生して100 年で、それまでに台湾
を「統一」する。「中華民国」の看板を下ろして、「中華人民共和国台湾省」を掲げるだけで
よい。その後、徐々に台湾の「中国化」を進めて、次の目標は2049 年、中華人民共和国
国100 年をめどに、空母機動艦隊を数個編成して、世界の海を支配する。それが毛沢東の夢
であり、その後の中国共産党指導者たちに受け継がれている。(了)
 
国基研