第218回】早くも末期症状?の習政権

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【第218回】早くも末期症状?の習政権

伊藤正 / 2013.10.28 (月)


産経新聞前中国総局長 伊藤正
 
 政権末期に不人気になった政治指導者がメディア批判をするのはよくあるが、発足から間もない中国の習近平政権は早くも厳しい言論統制を始めた。指導者としての自信の欠如、不安の裏返しであり、今後、統制は強まる見通しだ。
 今年初め、広東省の有力週刊紙「南方週末」の社説が検閲を通過した後、差し替えられ、それに抗議する記者らがストに入る事件があった。習近平共産党総書記(国家主席)の超大国を目指す「中国の夢」をもじって「中国の夢、憲政の夢」とした社説を、中央から派遣された幹部が総書記の意に沿うよう書き替えた事件で、それ以来、中国メディア界は党中央宣伝部の相次ぐ締め付けに苦闘しているという。
 ●報道規制の党通達、年初来80本
 北京のあるベテラン中国人記者によると、今年1月以来、宣伝部の報道に関する通達は約80本に上り、その大部分は報道の禁止ないし抑制の指示とされる。従来に比べ報道禁止項目が増加し、きめ細かくなっているのが特徴だ。
 例えば今年6月に出た通達では、社会不安をあおる記事が禁止なのは従来通りだが、バブル崩壊やシャドーバンキングといった用語や貧富の格差拡大など中国の政治や経済に不安や不満を抱かせる表現を禁止するとしている。
 こうした報道規制には、メディア関係者に党への絶対服従を強いる狙いもある。メディア関係者の忠誠度を測る手段であり、当局ににらまれると記者資格のはく奪や、刑事訴追されることもまれではない。その切り札が当局の握る記者証の発行権だ。
 中国当局はこのほど、全国の新聞社、放送局に所属する25万人の記者証の更新を年内に行うと通達した。共同電によると、更新希望者にはマルクス主義新聞観の学習が義務付けられ、歴史問題や領土問題では日本に絶対譲歩しないとの決意表明を求められるという。
 ●変革を迫るネット世論
 中国では、報道機関は党の「のどと舌」と位置付けられ、毛沢東は鉄砲(軍)とペン(宣伝)を党を支える「2本の棒」になぞらえた。習近平指導部は、軍には特権と利権を与えて懐柔する一方、報道機関は飼いならし、主人の命令に従うペットのように見なしているかにみえる。
 だが通信革命によってメディアの多様化、拡大化が進む今日、公式メディアの影響力は低下する一方だ。今なお獄中にいるノーベル平和賞作家の劉暁波氏は以前、筆者にこう話していた。
 「共産党打倒のために天安門事件と同様の街頭行動はやるべきでない。流血はもうごめんだ。それよりインターネットで共産党を包囲し、世論の力で変革を迫る方が現実的だと思う」
 共産党はどこまでネット世論の圧力に抵抗を続けるのだろうか。(了)
 
 
ルーズベルトが日本に戦争を仕掛けた
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