【第213回】科学と理性に基づく原発政策を

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【第213回】科学と理性に基づく原発政策を

櫻井よしこ / 2013.09.24 (火)


国基研理事長 櫻井よしこ
 
 原発に向き合う上で大事なのは、科学と理性に基づく姿勢である。民主党は科学を捨て去り、専ら感情を以て原発事故に対処し、およそすべての点で失敗した。自民党民主党の犯した過ちを根本的に改めるべき立場にある。安倍晋三首相の発するメッセージも科学的かつ合理的であることが求められている。
 東京電力福島第1原発の5号機及び6号機の廃炉要請という首相の9月19日の発言には、その点、疑問を抱く。
 ●民意の誘導こそ政治の役割
 福島第1原発の1号機から4号機で事故を起こした東京電力の対応が一貫して後手後手に回り、許容し難いのは言うまでもない。それでも、1000年に1度の大地震と大津波を乗り切った5号機と6号機は、福島第2原発及び東北電力女川原発などと共に、日本の優れた原発技術を象徴しており、むしろ誇ってよいものだ。原発事故とその処理における失敗の連鎖を厳しく批判する一方で、日本の原発技術の確かさは認識しておく必要がある。
 廃炉要請の理由として首相が「汚染水対策に集中するため」と語り、菅義偉官房長官が地元の廃炉に向けた陳情に言及したように、汚染水の解決と地元の了承なしには原発を維持できないのが現実である。
 だが、そのような局面だからこそ、政治的配慮にとどまらず、科学的視点に基づいた方向付けが欠かせない。住民感情ゆえに5号機と6号機の再稼働が不可能ならば、その由を国民に伝え、同時に優れた技術としての原発の継続という方向を示さなければ、首相発言は政治的パフォーマンスに陥る危険性がある。
 汚染水問題での首相の動きは速く、従来の対症療法的対策を超える根本的対策構築への工程を今週内にも公表する予定であることを評価する一方、混乱の中では民意をすくい上げつつも、政治の重要な役割が民意の導きであることを強調しておきたい。
 ●世界が認める日本の技術
 いま、ロシアを除いてどの国の造る最新鋭の原子炉も日本の技術なしには成り立たない。中国とて例外ではない。競合する世界で日本の技術的優位がいつまで保持できるのか、他国がいつ日本を凌駕するのかは、これからの日本次第だ。現在の真実は、技術大国日本への世界の期待が大きいこと、そして世界は安倍首相がその期待に堅実に応えると見ていることだ。
 首相には、安全を確保した上で国内の原発を継続する確固たる方向性を打ち出し、その政策を支える科学的かつ理性的なメッセージを発信することを求めたい。
 隗より始めよ、である。福島の人々に、政治的言動ではない、科学的説明に支えられた原発政策を誠心誠意語ることが、原発行政の原点である。(了)
 
 
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