【第204回】「防衛力の在り方検討に関する中間報告」を読んで

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【第204回】「防衛力の在り方検討に関する中間報告」を読んで

川村純彦 / 2013.07.29 (月)


国基研客員研究員・川村純彦研究所代表 川村純彦
 
 7月26日、防衛省は「防衛計画の大綱」見直しに向けた「防衛力の在り方検討に関する中間報告」を発表した。今回の報告では、初めて実戦シナリオに基づき必要な防衛力が示され、自然災害を含む有事シナリオに沿って自衛隊の能力を評価した結果を基に、防衛力を一元的に整備する統合防衛戦略の策定も図られた。また、①警戒監視能力の強化②島嶼部攻撃への対応③弾道ミサイルやゲリラ・特殊部隊への対応―等を防衛力整備の重点に据えた。安倍晋三首相が目指す「強い日本」の具現化に必要な施策をほとんど網羅しており、極めて適切な内容であって、発表のタイミングも時宜を得たものと言える。
 ●戦後体制脱却の転換点
 第2次安倍内閣の成立以降の流れを見ると、我が国は誇りある力強い独立国家へ移行する重要な転換点に差し掛かっているようである。安倍首相の誕生によって憲法改正へ弾みがつき、集団的自衛権の行使を禁じた政府の憲法解釈など多くの障害を打破して、情けない戦後の安全保障政策に終止符が打たれる明るい展望が開けてきた。
 我が国周辺の情勢を見ると、中国の軍事力は経済発展に支えられて急速に増強され、尖閣諸島周辺を中心とする周辺海域での行動も強引さを加えつつ活発化しており、緊張の緩和は期待できない。
 一方、日米同盟のパートナーである米国のオバマ政権は2期目に入って以来、中東、北朝鮮、中国などの動きにうまく対応できす、国内不祥事の処理に追われて内向きの姿勢に転じ、アジアにおける安全保障のリーダーは事実上不在の状態となった。
 しかし、アジア・太平洋地域の平和と安定にとって、日米安保体制の強化は不可欠の要件であり、安倍首相の「強い日本」もその線上にある。我が国が積極的に防衛力を強化すると同時に、東南アジア諸国、インド、オーストラリアとの協力を推進し、アジアの安全保障体制の構築にイニシアティブを発揮すれば、内向きになった米国のアジア・太平洋政策に対しても力強い支えとなることは確実である。
 ●気掛かりな財政事情への言及
 今回の報告書で唯一気がかりな点は、「厳しい財政事情をふまえ今後の防衛力整備の優先事項を明確化し、統合的かつ総合的な観点から真に実効性のある防衛力を整備していく」という、報告書全体のトーンと異なる一行がさりげなく挿入されていることである(中間報告7ページ)。
 国防は国家の生存と主権を担保するものであって最優先されるべきであるが、防衛予算が他の予算と同じく、従来どおり概算要求の際のシーリングの対象として一律削減されることには強い疑問を感じる。国防に対する我が国の強い決意を示すだけでなく、これまでやむを得ず放置されてきた所要の防衛力を可及的速やかに整備するためにも、防衛費の顕著な増額は何にもまして優先されるべきであろう。
 安倍政権は不退転の決意で新しい時代の安保政策策定に取り組み、12月には誇りを持って「強い日本」を実現するための新しい「防衛計画の大綱」を国民と世界に示していただきたい。(了)
 
 
 
ルーズベルトが日本に戦争を仕掛けた
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