【第198回】アベノミクスの建設的な議論と実行を

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【第198回】アベノミクスの建設的な議論と実行を

大岩雄次郎 / 2013.06.17 (月)

国基研企画委員・東京国際大学教授 大岩雄次郎
 アベノミクスへの批判がやかましい。目先の株価や為替の変動に気を取られ、性急に結論を求める不毛な議論の応酬に終始している。日本経済が20年間の長い停滞から再生するには時間がかかる。重要なのは、アベノミクスがもたらした経済再生の最後の好機を逃さず、生かすための政策論議とその実行に全力を注ぐことである。
 ●株価・円相場は調整局面
 過去1カ月間の株価の変動を見ると、日本株の急落だけで世界の株安につながらなかったことからも、日本株の行き過ぎた上昇分の調整局面に入ったと考えるのが自然である。円相場も、日銀の金融緩和より、米国の金融緩和による長期金利の動きに左右される傾向にある。この点は、日銀単独の金融市場の支配力、つまり金融緩和の効果を過信してはならないことを示唆している。
 日本の株価は、首相復帰前の安倍晋三自民党総裁が無制限の金融緩和を伴うインフレ目標政策の導入を求める考えを示した昨年11月15日の前日の8664円から一時1万5627円まで上昇し、その後急落したとはいえ、6月14日に1万2686円となった。この間の上昇率は46%に達し、主要国と比較しても大幅な上昇である。同期間の為替も、1ドル=79円90銭が103円74銭の最安値の後、94円07銭となり、18%弱の円安が進んだ。「第一の矢」(金融緩和)はほぼ的を射たと言える。
 その結果、内閣府が6月10日に発表した今年1~3月期(第1四半期)の国内総生産(GDP、季節調整済み)改定値によると、日本経済の実質成長率は速報値の年率3.5%を上回り、年率4.1%となり、先進7カ国(G7)中トップを記録した。設備投資は前期比マイナス0.3%と、速報段階のマイナス0.7%から小幅上方修正された。民間消費支出は前期比0.9%、民間住宅は同1.9%、輸出は同3.8%といずれも増加している。また、消費者や企業の信頼感の回復に加えて、求人倍率がおよそ5年ぶりの水準に上昇するなど、雇用市場にも改善が見られる。「個人消費と輸出主導の高成長」の流れは堅持されている。
 ●経済再生に必要な構造改革
 金融緩和は需要サイドの改革である。日本経済の再生に必要なのは供給サイドの改革である。アベノミクスの意義は、需要の引き上げを先行させ、痛みを伴う構造改革を実現する政治的環境をつくるところにある。極めて難しい政策運営が求められ、バブル崩壊財政破綻の危険性と背中合わせである。
 安倍政権には、今後の構造改革にもTPP(環太平洋経済連携協定)交渉参加を決定した政策実行力を期待したい。17~18日に北アイルランドで開催される主要8カ国(G8)サミットで経済成長と財政再建の実行を公言することは、構造改革の実施で国際的な協力を得るだけでなく、退路を断つ覚悟を国民に示すためにも重要である。(了)
 
 
 
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