4回目の慰安婦騒動、政府は組織的反論を

  今週の直言
   第143回
         4回目の慰安婦騒動、政府は組織的反論を
                  国基研企画委員・東京基督教大学教授 西岡力
 
 慰安婦問題が昨年からまた燃え上がってきた。これで4回目だ。1991年に朝日新聞がキーセンとして人身売買された女性を「挺身隊として強制連行された」とする大誤報をしてから、93年に慰安婦の「強制連行」を事実上認めた河野洋平官房長官の談話が出るまでが1回目。96年にすべての検定済み中学歴史教科書に慰安婦強制連行の記述が入り、有識者と議員らが事実誤認だと問題提起して日本国内で大論争が起きたのが2回目。2007年に米下院が慰安婦を「性奴隷」とする非難決議を通した時が3回目だ。
 昨年8月、韓国の憲法裁判所は、韓国政府が日本に対して元慰安婦への個人補償を求める外交交渉をしないことを「違憲」とする判決を下し、12月にソウルの日本大使館前に慰安婦の像が建ち、同月の日韓首脳会談で李明博韓国大統領が繰り返しこの問題を取り上げた。今も、在米韓国人団体が米国各地に慰安婦の記念碑を建てる活動を進めている。
●謝罪によって事態が悪化
 「戦時中、日本軍が20万人の朝鮮人女性らを性奴隷にした」という事実無根の反日宣伝がいまだに世界を跋扈している。慰安婦問題の本質は事実関係をめぐる論争ではない。北朝鮮工作機関と、それと深い関係にある韓国民間団体、日本の「反日」活動家らによる、日韓関係を悪化させることを目的とした謀略宣伝なのだ。その本質を直視せず、謝罪すれば誠意は通じるなどと安易な対応をした外務省に、このような事態を招いた一義的責任がある。
 筆者も積極的に参加した96~97年の大論争は、権力による連行はなかったという事実が明らかになる形で決着した。ところが、その前に日韓の反日勢力は、問題を国連に持ち込んでいた。国連で最初に「性奴隷」という用語を使ったのは、何と日本人弁護士戸塚悦郎だ。彼らの執念深いロビー活動の結果、96年、国連人権委員会は「戦時の軍事的性奴隷問題に関する報告書」(いわゆるクマラスワミ報告)を採択した。同報告は、当時、虚偽であることを左派の学者も認めていた吉田清治の証言を根拠とするなど、事実関係において全くでたらめなものだった。
●国際謀略に屈した外務省
 外務省は同報告書が採択される直前に、40ページにわたる反論文書を人権委員会に提出した。ところが、突然、反論文書は撤回され、事実関係には言及せず、既に日本は謝罪しているとした弁解文書に差し替えられた。これ以降、外務省は事実関係に踏み込んだ反論を一切しなくなる。米下院決議の時も、今回の慰安婦の像や李明博大統領の補償要求に対しても、権力による強制連行はなかったという反論をしていない。
 国際謀略に対して日本の名誉を守るためには、組織的な対応が不可欠だ。外務省の外に首相直属の対策本部と担当大臣を置き、本格的な対応をすべきだ。そのために、まず、専門家を集めた諮問会議のようなものを置くとともに、国会で国政調査権を発動して、96年の反論文書取り下げの経緯を調べることを提案したい。
                                            (了)
国基研
 
 
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