震災支援を軍事的に解析する

  日本海兵隊の創設こそ急務
            震災救援を軍事的に解析する
                   戦争&平和社会学者 北村 淳
 
 東日本大震災における初期救援活動を軍事的視点から考察した場合に最も悔やまれるのは、「シビリアンコントロールの民主国家において首相をはじめとする政権首脳の軍事的素養がゼロであることは、災害時においても国民にとってこの上なく悲惨な結果をもたらす」という事実である。
 (中略)
 水陸両用戦能力を保持していない自衛隊が、地震と大津波により道路網が寸断された海岸線地帯へアクセスすることは極めて困難であることは自明の理であった。
 (中略)
菅政権はあたかも自衛隊を万能な災害救助隊と誤解して、救援活動を自衛隊に丸投げしてしまった。加えて、自衛隊に不在の能力を補完できるアメリカに対する初動段階での全面的救援の要請も怠った。被災者に対する背信行為である。
 水陸両用戦能力とは、「洋上の艦艇を基地とする陸上戦闘部隊が、海と空を経由して陸地に到達し、作戦行動を実施する能力」を意味し、一言でいうと「海から陸にアクセスする能力」である。この能力は、あらゆる地点が海岸線から最大でも140kmほどしか離れていない日本のような島嶼国家を攻撃あるいは防衛する際には必要不可欠な軍事能力である。
 (中略)
 今回の災害救援初動段階で、自衛隊には存在しない水陸両用戦能力を同盟国アメリカに補完してもらうように日本政府が初動段階での全面的救援を要請していたならば、被災から2週間以上経過した段階においてすら、多くの被災者が満足な食事も得られず、粗末な暖房器具や寝具しかないため凍えており、下着や靴も満足に支給されていないというような、非文明的な避難生活を送る必要はなかったと断言できる。
 (中略)
 自衛隊は、少数の揚陸艦と揚陸艇ならびに水陸両用戦に転用可能なヘリコプターを保有しているものの、多種多様な水陸両用戦用装備の調達が必要である。調達の第一歩として、米海軍退役空母キティホーク級三隻の購入を提案する。
 (中略)
外敵の侵攻のみならず大規模災害救援活動には救援部隊の基地としてだけでなく、一時避難施設、緊急医療施設、大型浄水給水施設、大型給食施設、被災地に送電する発電所など多才な威力を発揮する。未曾有の被災の教訓を無にしないためにも、即刻日本海兵隊の創設に着手しなければならない。
 
詳しくは、「日本の息吹」5号
 
 
国基研