英国で新自由主義が復権?

           皇室とともに

トラス首相を推していた藤井厳喜氏。新自由主義者から邪魔にされて辞任に追い込まれたのかなと?

そうだったようです。

女性でも気に入らなければ潰されると言う実例だと感じた。

 

『「新」経世済民新聞』
 2022年10月25日

 英国で新自由主義復権
 


 From 室伏謙一
  @政策コンサルタント
   /室伏政策研究室代表

Party-gateスキャンダルを(表向きの?)理由として辞任したボリス・ジョンソン元首相の後任として選出されたリズ・トラス首相が、2月と経たずに辞任を表明したことを受けて、今週次期保守党党首選が急遽行われました。(英国では、多数党の党首が国王からの任命を受けて首相に就任することとされています。したがって保守党党首選=英国の首相選出手続なのです。ちなみにトラス首相はエリザベス2世女王が任命した最後の首相であり、今週選出される新首相はチャールズ3世国王が任命する最初の首相です。)

 今回の党首選、ジョンソン元首相の出馬が取り沙汰されていましたが、直前で断念、ジョンソン政権で財務大臣を務めていたリシ・スナック(Rishi Sunak)氏が最有力候補とされて、最終的に立候補の締切までに届出をしたのがスナック氏のみだったため、無投票で同氏が保守党党首、すなわち英国の首相に就任することとなりました。スナック氏は前回の党首選にも出馬し、決選投票でトラス首相とその座を争い、敗れた人物です。

 スナック氏はインド系移民、しかも英国への移民という点で言えば移民2世であり、史上初のインド系、しかも日の浅い移民出身初の首相ということになるでしょう。(なお、アングロ・サクソン系ではない移民出身の首相としては同氏が初めてではなく、19世紀後半に二度首相になったディズレイリがいます。)

 おそらく日本では大手メディアや左翼リベラル系のネットメディアを中心に、その点ばかりが注目・強調されて、英国も変わった、日本も変わるべきだと言った頓珍漢な方向に議論が進められるのではないでしょうか。

 この点はこの点として議論する必要があると思いますが、スナック氏の最大の懸念材料は彼が根っからの新自由主義者であり、記者会見(日本時間の24日)において明確に、小さな政府を目指すこと、そして移民受入を拡大すること(入国管理の緩和)を明言していたことです。後者については、「高度人材」である移民の受入拡大は英国におけるイノヴェーションにもつながるとまで語っていました。どこかで聞いたことがあるような話ですね。これが大きな間違い、誤った認識であることは『西洋の自死』あたりを読んでいただければわかると思います。

 スナック氏はインド系であると説明しましが、彼の祖父の時代はインドは英国の植民地であり、その時代にインドから同じく英領東アフリカに移住し、東アフリカ諸国の独立を前に英国に移住してきたようで、スナック氏の父親が医者であったことも考えると、根っからのAnywhere的な性格の持ち主であると言えるでしょう。(この辺りの関係性を詳しく知りたい方は、 “The Road to Somewhere”という本をお読みいただければと思います。もしかしたら翻訳本が出ているかもしれません。)

 それが新自由主義的な考え方をより一層強めていると思いますが、問題はそのこと、すなわち新自由主義者であり、今更大失敗した小さな政府推進論者であり、これまた大失敗した移民の受入拡大を進めようとしている政治家が英国の首相になったことで、日本の新自由主義者たちが、小さな政府が大好きで、ということは緊縮財政が大好きな連中が、移民受入を拡大したくて仕方がない連中が、英国に倣え、英国で移民出身のインド系の首相が誕生し、新自由主義政策を推進しようとしているのだから、日本でもやはり新自由主義政策で成長を目指すべきだ、などと頓珍漢というか完全に間違った主張をして大騒ぎをするに至るのではないかということ。

 それはとりもなおさず、緊縮をさらに推進すること、国としての役割、地公体としての役割を事実上放棄して自己責任社会を進めることにつながります。そうなれば、我が国の貧困化は更に進み、格差は拡大し、日本の技術や技術者は買収されて海外に流出し、不動産は買い漁られ、インフラは老朽化どころか朽ちていき、日本の発展途上国化が一気に進むことになりかねません。

 是非皆さん、スナック氏が英国の新首相就任を受けて、インド系であることや若いこと(42歳)等、日本の大手メディアが好んで報道する、喧伝する話に惑わされることなく、彼の主張は間違っていて、彼の政策を進めれば英国は不況のどん底へ突き落とされる、日本は絶対に真似をしてはいけないということを認識いただいた上で、周りに広めていただければと思います。(今後スナック氏の主張や政策の詳細な内容が明らかになっていくと思います。日本でどこまで正確に報道されるか分かりませんが、そちらも要注意です。)

 ちなみに対抗馬とされながら、推薦人を規定数集められず出馬を断念したPenny Mordaunt女史も小さな政府推進論者なのです・・・