なぜトランプ大統領は 、「知識人」に嫌われるのか?

           皇室とともに

忙しい中を教育に奮闘くださる教員に敬意を表します。

教科書以外に大切なことが沢山あります。

下記の情報もそうです。

是非お読みください。

子どもに伝えてください。

教員の政治的中立性を正しく理解することは、政府を批判しない、特定の政党を支持や誹謗中傷しないことです。言葉を間違えずに教えることは主権者教育に繋がります。

 

三橋貴明の「新」経世済民新聞』
 2021年1月8日

 なぜトランプ大統領
 「知識人」に嫌われるのか


 From 施 光恒(せ・てるひさ)
    @九州大学


あけましておめでとうございます
本年もよろしくお願いいたします(^_^)/


2月26日に、東洋経済新報社から興味深い翻訳本が出ます。
ヨラム・ハゾニー『ナショナリズムの美徳』(庭田よう子訳)という本です。解説を、中野剛志さんと私が書きます。
https://www.amazon.co.jp/dp/4492444602

著者のハゾニー氏は、1964年生まれのイスラエルの政治哲学者であり聖書研究家です。本書の原書は2018年に出版されています。

この本は、米国の昨今の保守の動向を理解するうえで重要な本です。例えば、政治ジャーナリストのダニエル・ルーバン氏は、いわゆる「ネオコン」(新保守主義)や新自由主義に替わる新しい保守主義の潮流を代表する人物としてハゾニー氏を挙げています。
https://newrepublic.com/article/154531/man-behind-national-conservatism


また、トランプ政権の政策を理解するためにも、本書は必読です。トランプ政権の国家安全保障会議NSC)の報道官を務めたマイケル・アントン氏は、2019年4月に「トランプ・ドクトリン――政権内部の人間が大統領の外交政策を説明する」という論説を『フォーリン・ポリシー』誌に発表しました。
https://foreignpolicy.com/2019/04/20/the-trump-doctrine-big-think-america-first-nationalism/

この論説で、トランプ政権の外交政策の理論的な基盤とされ、何度も引用されていたのが、本書でした。

三橋貴明さんもよく話していますが、私も、現在の各国の政治や経済を理解するうえで一つのカギとなる観点は「ナショナリズム vs グローバリズム」だと思います。

本書は、まさにこの観点を政治思想的に理解するうえでとても有益です。また、そのうえで「ナショナリズム」の価値を知るのに大いに参考になります。

著者のハゾニーは、西洋の政治の伝統には、「理想的な世界とは何か」について大きく分けて二つのビジョンが常に存在してきたと述べます。

一つは、「多数の国々(ネイション)からなる世界」です。自分たちの歴史や伝統、文化、言語、宗教、慣習、法律などを大切にし、そのうえに社会を作っていく国々からなる世界を理想とするものです。

もう一つは、「帝国」です。合理的で普遍的な道徳や法、あるいは宗教といったものを世界にあまねく普及させ、それらに基づいて統治していこうというものです。国境や国籍をなくし、いわば世界を一つの国にすることが理想だというビジョンです。

まさに、「ナショナリズム vs グローバリズム」の対立だと言えます。

ハゾニーは、「多数の国々からなる世界」と「帝国」という二つのビジョンは、西洋の政治の伝統に、少しずつ形を変えつつも常に見出せるものだと言います。また、二つのビジョンのどちらが優勢であるかは時代によって異なると論じます。

「多数の国々からなる世界」の源流は旧約聖書だとハゾニーは捉えます。旧約聖書には、イスラエル、アモン、モアブなど様々なネイションが登場します。それぞれ独自の慣習や言語、宗教、文化、法を持っていました。旧約聖書の時代は、「多数の国々からなる世界」のビジョンが優勢だったのです。

それが変化し、「帝国」のビジョンのほうが優勢になったのは、キリスト教が国教化されたローマ帝国の時代でした。ローマ帝国は、周囲の多様なネイションや民族、部族を従え、拡大しました。「帝国」ビジョンが支配的だった時代は、結局、中世まで続きます。

「多数の国々からなる世界」の伝統が復活したのは、宗教改革以降のプロテスタントの興隆の時代です。そのときから、第二次大戦終了までは、国民国家こそが政治的理想とされた時代でした。ウッドロー・ウィルソン第一次大戦後に「ネイションの自決」(いわゆる「民族自決」、”national self-determination”)を、理想に掲げたことにも表れています。それぞれのネイションが政治的独立を獲得し、自分たちの国を作っていくことが、自由民主主義の実現にも、豊かさの達成にもつながると考えられたのです。

しかし、第二次大戦後、徐々に「帝国」のビジョンのほうが優勢になっていきます。
ネイションや国民国家ナショナリズムといったものの評判が、特に、欧米の知識人の間で非常に評判が悪くなるからです。理由はナチス・ドイツです。ユダヤ人に対する第二次大戦中のヒトラーの野蛮な行いが、ドイツの「ナショナリズム」のせいだと欧米の知識人の多くが受け取ったため、ナショナリズムは克服されるべきもの、なくしていくべきものだと考えられるようになりました。

もちろん、ハゾニー自身は、ナチスの蛮行はナショナリズムではなく、「帝国」の野望に基づくものだと見た方がいいと論じます。ヒトラー自身を鼓舞したのも「第三帝国」の理念だったわけですから。

しかし、欧米の知識人の多くは、ヒトラーを突き動かしたものはドイツのナショナリズムだったと受け取ったため、戦後の世界では「ナショナリズム」「国民国家」はすっかり評判を悪くしました。そのため、日本でもそうですが、欧米の知識人たちの間で、目指すべきは「多数の国々(国民国家)からなる世界」ではなく、国境をなるべくなくしていくような世界であるという認識が戦後だんだんと広がっていきます。

欧州のEUの構想はその結果、出てきたものだという側面が強いですし、また、それ以外にも、冷戦後のネオコン的な米国一国主義や現在まで続くグローバリズムも、ネイションを否定し(つまり「多数の国々からなる世界」のビジョンを否定し)、「帝国」ビジョンを実現しようとするものです。

ハゾニーはこのように、二つの理想的世界像のビジョンから西洋の政治を見る観点を提示します。

そのうえでハゾニーは、この二つのビジョンのうち、平和と安全を世界にもたらし、人々が自由や民主主義、格差なき社会、あるいは自らの伝統や宗教を十分に享受することができる世界を可能にするのは、「帝国」ではなく、「多数の国々からなる世界」のほうだと論じていきます。

つまり、「ナショナリズム vs グローバリズム」という現代の対立軸から言えば、「ナショナリズム」の側こそ、理にかなっていると主張します。

ハゾニーのナショナリズム国民国家体制の擁護論について詳しくは、また別の機会に紹介したいと思います。

このメルマガではこのあと、タイトルに掲げた通り、「トランプ大統領はなぜ「知識人」に嫌われるのか」を本書の議論を参考に考えてみましょう。

ハゾニーは、ナショナリズムを非難する議論で最もよくあるのは「ナショナリズムは憎悪を生む」というものがだと指摘します。「ナショナリストは、自国の福祉に最も関心を抱き、他国との競争で自国が勝つことを望む傾向がある」ので、その反面として外国人に憎しみを抱き、暴力を厭わないことにつながりやすい。だから、ナショナリズムは良くない。こういった議論です。

その一方、「帝国」ビジョンの信奉者は、「人類全体を思いやることで、自分たちはナショナリストの性質を特徴づける憎悪を克服した」と主張しがちです。

確かに一般的には、「ナショナリスト」というとなんとなく「偏狭」で「ちょっと怖い」というようなイメージがあります。他方、「グローバリスト」「地球市民主義者」「コスモポリタン」というと、「寛大」で「心が広い」「博愛的」といった印象を抱く人が多いようです。

しかし、ハゾニーは、現代の「帝国」ビジョンの信奉者であるグローバリストや地球市民主義者らも、他者に憎悪を抱く点ではまったく変わらないと論じます。彼らが憎悪を抱く対象は、「帝国」ビジョンに従わず、自国の慣習や文化、法などに愛着を持ち、「帝国」ビジョンが指し示す普遍的ルールといったものに疑義を呈する者です。つまりナショナリストです。

ハゾニーは、「帝国」ビジョンの支持者は、ユダヤ人のシオニズムイスラエル建国運動)やイスラエルという国家を憎悪の対象としてきたと考えます。あるいは最近ではEUから離脱した英国の運動(ブレグジット)や、「アメリカ第一主義」を標榜したトランプ大統領やその支持者に対しても、憎悪を強く抱くと見ます。

ハゾニーは、例えば「多数の国々からなる世界」と「帝国」という二つのビジョンで「アウシュビッツ」や「イスラエル国家」がどのように違って見るかに触れつつ、「帝国」ビジョンの信奉者が「多数の国々からなる世界」ビジョンの支持者に抱く憎悪を説明します。

まず、「アウシュビッツ」の見方の違いです。

「多数の国々からなる世界」ビジョン:「アウシュビッツは、手ぶらで裸で立つユダヤ人の男女が、自分たちを守るライフルがないために子どもたちが死ぬのをじっと見ているという、言いようのない恐怖を表す」

「帝国」ビジョン;「アウシュビッツは、自国の権利や国益に関する政府見解だけを裏づけとするドイツ軍兵士が、他者に対して武力を行使するという、言いようのない恐怖を表す」

次に「イスラエルという国家」の見方についてです。

「多数の国々からなる世界」ビジョン:「イスラエルは、ライフルを手に立つユダヤ人の男女が、その子供たちやほかのすべてのユダヤ人の子どもたちを見守り、彼らを守っている姿を表す。イスラエルアウシュビッツとの対極にある」。

「帝国」ビジョン:「イスラエルは、自国の権利や国益に関する政府見解だけを裏付けとするユダヤ人兵士が、他者に対して武力を行使するという、言いようのない恐怖を表す。イスラエルアウシュビッツである」。

「多数の国々からなる世界」を理想とするビジョンでは、アウシュビッツは自分たちの国家を持てずにいたユダヤ人の悲劇です。また、国家を持つことは、生命や自由を確保するのに必要なのです。


他方、「帝国」のビジョンからすれば、自国の防衛の意思や同胞愛、ナショナリズム、ひいては国民国家そのものも、「アウシュビッツ」を生み出したものと同根です。「帝国」ビジョンの支持者は、ナショナリストを後ろ向きで、野蛮で、未成熟な段階をまだ脱していないと捉え、ときとして憎悪や軽蔑の対象としがちなのです。

私は、ハゾニーの議論を念頭に置くと、トランプ大統領がなぜ大手マスコミや大学人などの「知識人」に特に嫌われるのかあらためてよくわかった気がします。

トランプ大統領は、グローバリズムを退け、「多数の国々からなる世界」を信奉するナショナリストです。それゆえ、EU統合の深化や、グローバル市場や国連中心主義の実現こそ、人類の進歩だと考えるグローバリストや地球市民的傾向を持つ人々(多くは「知識人」と自認する人々)から、嫌われるのでしょう。そういった人々からすれば、トランプ大統領は野蛮で未成熟で後ろ向きなのです。

しかし本当にそうでしょうか? 本書では、ナショナリストのビジョンの正当性を、ハゾニーは丁寧に説明していきます。私はハゾニーの議論から学ぶべき点が多々ありました。「多数の国々からなる世界」という理想的世界像は、再評価に値するものではないでしょうか。

トランプ大統領の政策は、ハゾニー流のナショナリストの色彩が濃いものです。

例えば、トランプ大統領は2019年の国連総会の演説で次のように語りました。この演説は、多くの人々の共感を呼ぶものではないでしょうか。(欧米や日本のマスコミはほとんど報じませんでしたが…)。
https://www.whitehouse.gov/briefings-statements/remarks-president-trump-74th-session-united-nations-general-assembly/

「愛するわが国と同様に、この会議場に代表を送っている各々の国はそれぞれの歴史と文化と伝統を慈しんできました。それらは守り、祝福するにふさわしいものですし、我々に並外れた可能性や強さを与えるものでもあります。

自由な世界は、各国の基盤を大切にしなければなりません。国々の基盤を消し去ったり置き換えたりしようなどと試みてはなりません。

……あなたがたが自由を欲するならば、祖国を誇りに思いなさい。民主主義を欲するならば、あなたがたの主権を大切にしなさい。平和を欲するならば、祖国を愛しなさい。賢明なる指導者たちはいつも自国民の善と自国を第一に考えます。

未来はグローバリストたちのものではありません。愛国者たちのものなのです。主権を持ち独立した国々こそ、未来を有するのです。なぜならば、このような国々こそ自国民を守り、隣国を尊重し、そして各々の国を特別で唯一無二の存在にしている差異に敬意を払うからです……」。

昨日(1月6日)に、バイデン氏が次期大統領として米国議会で正式に認定されました。(大統領選での非常に多くの不正の疑惑が、ほぼまったく調査されなかったことは非常に残念ですし、バイデン政権の民主的正当性は弱いものとなってしまうでしょう)。トランプ大統領は政権を去ることになり、おそらくグローバリストの政治が米国で、そして世界で今後しばらくまた優勢になっていきます。

それにともなって、経済的格差の拡大、民主主義の機能不全、エリートと庶民の間の分断といったグローバリズムが生み出す問題がますます悪化していくはずです。

グローバリズムを冷静に評価するためにも、グローバリズムではないナショナリズムの世界像、つまり「多数の国々からなる世界」像を、意識しておくことは重要だと思います。

その意味で、ハゾニーの『ナショナリズムの美徳』は重要な本です。出版されましたら、ぜひ読んでいただければと思います。

#トランプ

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